
離乳食が思うように進まないと、「どうして食べないんだろう」「同じ月齢の子はもっと食べているのに…」と、不安がふくらむことがありますよね。
毎日向き合っているお母さんほど、赤ちゃんの様子を大切に感じ、少しの変化にも心が揺れやすいものです。
私自身、保育の現場や看護師として多くの赤ちゃんを見てきましたが、離乳食の進み方は本当にひとりひとり違います。
そしてその“違い”は、ほとんどの場合、心配しなくて大丈夫なものです。
まいこ@保育園看護師ままここでは、お母さんの負担が軽くなり、安心して毎日を過ごせるように、「焦らなくて大丈夫な理由」と「今日からできるサポート」を分かりやすくまとめました。
1. 進みが遅いと感じるときの気持ちに寄り添って


まず、今感じている不安はとても自然なものです。
- スプーンを嫌がる
- 口を開けてくれない
- 食べる量が極端に少ない
- 月齢にあった固さに進めない
こんな姿を見ると、どうしても「遅れているのでは?」と思ってしまいますよね。
でも、大丈夫です。
離乳食の進み方は“比較”ではなく、その子のペースを見ていくもの。



ゆっくりに感じるとき、そこにはちゃんと理由があります。
2. “遅いように見える”よくあるパターン


赤ちゃんの食べるペースがゆっくりだと、「うちの子だけ?」と不安になりますよね。
でも、医療的な問題が隠れているケースは本当にまれで、ほとんどの赤ちゃんは“その子なりのペース”で進んでいます。
ここでは、実際によくあるパターンを、少し丁寧にお伝えしますね。
食べる量が少ないとき
赤ちゃんはまだ胃がとても小さく、食べる量にも波があります。
昨日はパクパク食べたのに、今日はひと口で終わり…なんてことも珍しくありません。
「なんで今日は全然食べないの?」ではなく、
「今日は気分じゃなかったのね」くらいに考えていただいて大丈夫です。
大人でも、「今日はあまり食欲がないな」という日がありますよね。
赤ちゃんも同じで、体調や気分が量に大きく影響します。
固さに進めないことがある
離乳食は、ペースト → だんだん粒 → かため…という流れで進めていきますが、
この“ステップアップ”がスムーズではない子もたくさんいます。
舌や口の動きがまだ発達の途中だと、
やわらかいもののほうが安心して食べられるんです。
「もうこの時期は固めにしなきゃ」と焦る必要はありません。
“食べやすい固さから、少しずつ慣れていく”で十分です。
赤ちゃんの食べ方に合わせて進めてあげましょう。
その日のコンディションに左右される
赤ちゃんは、ほんの小さなきっかけで食べ方が変わります。
- 眠い
- 喉が渇いている
- 遊びたい気持ちのほうが強い
- 気になる音や物がある
- 場所が変わった
──こうした、ちょっとした「今の気分」で、食べられる量やペースが大きく変わってしまいます。
でも、これは“遅れ”ではありません。
その子の今の気持ちや、その日の状態が食べ方に表れているだけです。
大人も、疲れている日は食べる気が出なかったり、逆にモリモリ食べられたりしますよね。



赤ちゃんは敏感なので、ちょっとした変化でペースが変わるのは自然なことなんです。
3. 発達の視点:離乳食は“階段”ではなく“坂道”


離乳食の進み具合を見るとき、つい「月齢に合わせて進めなきゃ」「今どの段階にいるのだろう」と考えてしまいますよね。
でも、実際の発達は、何段もある階段をきれいに上がっていくようなものではありません。
むしろ、ゆるやかな“坂道”を進むイメージに近いのです。
進んだと思ったら少し戻る。
また、ゆっくり前に進む。
ときには足踏みする日もある。
この「行ったり戻ったり」が、発達そのものと言ってもいいほど自然な流れです。
食べむらは「問題」ではなく、発達のリズム
たとえばこんなこと、ありませんか?
- 昨日は食べたのに、今日はスプーンを見るだけでイヤそう
- 新しい食材が好調だったのに、翌日はほとんど口に入れない
- 形を進めたらべーっと出して、またなめらかに戻すとよく食べる
これらは「うまくいっていない」サインではなく、赤ちゃんが自分の“ちょうどいい”を探している途中の姿です。
大人だって、その日によって食欲や好みが変わることがありますよね。
赤ちゃんも同じで、ただその振れ幅が大人よりずっと大きいだけなのです。
発達には「前に戻るように見える時期」が必ずある
口の動きや舌の使い方は、日々発達しながら覚えていくものです。
慣れてきたように見えても、疲れていたり、気持ちが落ち着かなかったり、体調がいつもと少し違うだけで、うまく動かせない日があります。
ペーストに戻したらまた食べ始めたというのは、「戻ってしまった」のではなく、今の赤ちゃんに合っている形に戻っただけ。
その安心感が、次のステップにつながっていきます。
「ゆっくり進む=成長していない」ではない
赤ちゃんの発達は、一日単位ではなく、数週間〜数ヶ月の長い目で見ると変化がよく分かります。
- 少し前はスプーンを近づけるだけでイヤがっていたのに、今日は触れられるようになった
- ペーストでしか食べられなかったのに、とろみなら少し受け入れられるようになった
- 座っていられる時間が伸びた



こうした小さな変化こそ、階段の「段差」ではなく、坂道を着実に進んでいる証拠です。
4. 焦らなくて大丈夫な理由


① ミルク・母乳が今も栄養の中心だから
離乳食初期〜中期は、ミルクと母乳がしっかり栄養を支えています。
たとえ食べる量が少なくても、成長に必要な栄養は十分足りていることが多いです。
「離乳食=栄養」と思うと焦ってしまいますが、実はこの時期は“食べる練習”が大きな目的です。
② 食べる力は「安心感」と一緒に育つ
赤ちゃんは、「楽しい」「安心できる」という感覚がとても敏感です。
気持ちが落ち着いていると、自然と口の動きもスムーズになります。
逆に、無理に進めようとすると、その緊張が赤ちゃんにも伝わり、食べない時期が長引くこともあります。
焦らず“心の余裕”を大切にすることは、結果的に食べる力を育てる近道になります。
③ ゆっくりタイプの子が、後々安定してくることも多い
たくさんの赤ちゃんを見てきましたが、慎重タイプの子は、いったん食べ慣れると後々安定して長く食べられるようになるケースが多くあります。
最初はゆっくりでも、確実に育っていく姿をたくさん見てきました。
5. 月齢ごとの「ゆっくりペース」具体例


赤ちゃんの離乳食の進み方には、本当に個性があります。
同じ月齢でも“食に興味津々で進む子”もいれば、“ゆっくり慎重に進む子”もいます。
ここでは、月齢ごとに「これくらいゆっくりでも普通ですよ」という、安心できる具体例をお伝えしますね。
5〜6ヶ月
スプーンが口に触れただけでイヤになる日があっても大丈夫
この時期の赤ちゃんは、まだ“食べ物を口に入れる”という経験そのものが初めて。
だから、スプーンの感触に驚いたり、見慣れない色やにおいに警戒したりする子も多いです。
- スプーンを口に当てただけで顔をそむける
- 最初の1口だけで泣いてしまう
- 今日は食べられない日だなと感じる
──そんな様子があっても、まったく問題ありません。
離乳食は「食べる練習」ではなく、
まずは「食べ物を知る・慣れる」のが目的。
赤ちゃんにとって“今日は気分じゃなかった”というだけなんです。
7〜8ヶ月
ペースト状が好き、固さがなかなか進まなくても自然
周りの赤ちゃんが「刻み食」に進んでいても、
自分の子はまだペースト状が安心、というケースも本当によくあります。
- 粒が残るとベ〜っと出してしまう
- 舌で押しつぶしたり、もぐもぐがまだ難しい
- とろとろのほうが食べやすそう
そんな状態は、この月齢では“よくあること”です。
舌や口の動きは、赤ちゃんが成長した時期に自然と発達していきます。
焦らず、その子の「今食べやすい形」から続けていくことが一番です。
9〜11ヶ月
噛む練習は急がなくてOK。
遊びながら少しずつ覚えていく時期
この時期は、食べ方にも大きな個性が出ます。
- 指でつかんで遊んでしまう
- ひたすら触って、あまり食べない
- もぐもぐと噛む動きがまだぎこちない
──こんな様子も、まったく珍しくありません。
赤ちゃんにとっては「食べる=遊びながら学ぶ」プロセス。
手づかみしたり、こぼしたりしながら、
口と手を協力させる練習をしています。
噛む力も、ある日突然ぐんと伸びたりします。
ゆっくりで大丈夫ですよ。
1歳〜
“興味がある日”と“全くない日”をくり返すのは自然なこと
1歳を過ぎると、いわゆる「食べムラ期」が本格的に始まります。
- 昨日は大人の分をほしがるほど食べた
- 今日はひと口で終了
- 好きだった食材を突然嫌がるようになった
──こんな波が出る時期です。
行動範囲が広がり、興味の対象も食事以外にどんどん増えていくため、
「遊びたい」「外が気になる」「疲れてる」などの理由で、ペースが日によってまったく違うことも。
でも、これも成長のひとつ。
食べムラは“発達の証拠”でもあります。
どれも珍しいことではありません
離乳食がゆっくりペースに見えても、
それは“問題”ではなく、“その子のリズム”です。
大切なのは、月齢の基準よりも、
お子さんの「できた」「興味が出てきた」を少しずつ積み重ねていくこと。
ママが「大丈夫だよ」と見守ってあげられれば、
赤ちゃんは自分のペースで必ず食べる力をつけていきます。
6. 今日からできる、無理のないサポート


離乳食がゆっくりペースのときこそ、
「特別なことをしなくていい」
「ちょっとした工夫で十分」
ということを知っておくと、心がぐっと軽くなります。
ここでは、お母さんの負担にならず、赤ちゃんのペースにも寄り添えるサポートをまとめました。
食べやすくする小さな工夫
赤ちゃんは、大人が思う以上に“食感”や“温度”に敏感です。
ほんの少し変えるだけで、急に受け入れやすくなることもあります。
- 月齢の基準より、その子が食べやすい質感やとろみを優先してよい
- 冷たいより、ほんのり温かい方が香りが立ち、食べやすいことがある
- 水分を少し増やして、口の中で動かしやすくする
- 「小さじ1」でも多いと感じたら、さらに半分、1/4にしても問題なし
赤ちゃんにとっては、「今食べやすい形」が一番の正解。
小さな調整で「今日は食べられた」に繋がることもあります。
食べる時間を心地よくする雰囲気づくり
赤ちゃんは“空気の変化”を敏感に感じ取ります。
ママが「食べてほしいな…」と思うほど、慎重になってしまうことも。
そんなときは、少しだけ肩の力を抜いてみてください。
- 焦る気持ちがあるときほど、スプーンはゆっくりと
- スプーンを口元に近づけすぎず、赤ちゃんが“自分で選べる距離感”を保つ
- 嫌がったり、顔をそむけたら、すぐに中断してOK
- 長く続けず、短い時間で切り上げる方が結果的にうまくいく
「食べる時間=イヤな時間」ではなく
「食べる時間=安心できる時間」
と感じてもらえることが、食べる意欲につながります。
生活リズムの影響をやさしく見ていく
離乳食が進まない理由は“その日のコンディション”によることも多いです。
赤ちゃんはまだ、自分の体調を言葉で伝えられないだけ。
- 授乳後すぐでお腹いっぱいだった
- 眠くて集中しづらかった
- 便秘でお腹が張っていた
- 遊びたい気持ちが勝っていた
こんな小さな理由でも、赤ちゃんの食べる意欲は大きく変わります。
「食べない=進んでいない」ではなく、
「今日はその日じゃなかっただけ」
と柔らかく受け止められると、お母さんの心も軽くなります。
7. やらなくていいこと


離乳食が進まないと、「もっと頑張らなきゃ」と気持ちが焦ってしまいますよね。
でも、離乳食の時期に本当に大切なのは、“頑張りすぎないこと”なんです。
赤ちゃんの成長は、食べた量やスケジュールでは測れません。
ここでは、お母さんの心を少し軽くする“やらなくていいこと”をお伝えします。
無理に口へ運ばなくて大丈夫
赤ちゃんが顔をそむけたり、口をしっかり閉じていると、つい「一口だけでも…」と思ってしまうものです。
でも、無理に食べさせようとすると、
- “食べる=嫌なこと”というイメージがつきやすい
- 誤嚥のリスクにつながる
- 次の日以降、さらに拒否が強くなる
こんな悪循環を生むこともあります。
嫌がった時点でいったん終了して問題ありません。
離乳食はまだ栄養の中心ではなく、「食べる経験を育てている途中」だからこそ、無理をさせないことが大切です。
完食を目標にしなくていい
離乳食の量は、その日その瞬間の気分に大きく左右されます。
昨日はよく食べたのに、今日はまったく食べない――そんなことは本当によくあります。
だからこそ、量ではなく“できたこと”に注目してあげてください。
- 椅子に座れた
- スプーンを見つめた
- 一口だけでも受け入れた
- 手を伸ばして触れようとした
これらはすべて成長です。
「完食=成功」ではなく、「経験できた=大きな一歩」と捉えて大丈夫です。
月齢表に振り回されなくて大丈夫
本やサイトに載っている月齢ごとの進め方は“あくまで目安”です。
実際は、その通りに進む子のほうが少数派だったりします。
- 5〜6ヶ月でスタートしても進みがゆっくり
- 7〜8ヶ月でまだペーストを好む
- 9ヶ月を過ぎても少しずつしか食べない
- 1歳を過ぎても食べムラが大きい
どれも自然な範囲で、“遅れている”とは違います。
赤ちゃんの体の準備、口の動き、興味の方向性…
どれもその子のペースで育つものだからです。
ママが月齢表を見て不安になる必要はありません。
一番大切なのは、目の前の赤ちゃんの様子です。
8. 受診したほうが安心なケース


普段の“ゆっくりペース”と違い、
- ぐったりしている
- 水分がほとんどとれない
- 嘔吐や下痢が続く
- 体重が明らかに増えない
- 機嫌がずっと悪い
こうした様子があるときは、受診を考えてよいタイミングです。
「こんなことで相談して大丈夫かな」と迷う必要はありません。



不安なまま過ごすより、専門家に聞いたほうがずっと安心できます。
9. 看護師ママからのメッセージ


離乳食が進まない日は、心配でいっぱいになりますよね。
でも、そのたびに赤ちゃんは、ゆっくりと確実に成長しています。
早く食べられるようになることが“良いこと”ではなく、
その子に合ったリズムで育つことが、いちばん大切なんです。
できていることは、必ずあります。



小さな一歩を見つけながら、今日も大丈夫だと思える時間が増えますように。











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