夏の日差しの下、水しぶきと一緒に笑い声が弾む時間は、子どもたちにとって特別なひとときです。
水遊びは、全身を使った運動や感覚刺激を通して、体力や運動能力、好奇心を育む大切な遊びのひとつ。
水の感触や浮かぶ感覚は、発達の段階にある子どもにとって新鮮で心地よく、心身の成長をサポートします。
ただし、その楽しい時間を安心して過ごすためには、大人の見守りとちょっとした工夫が欠かせません。
この記事では、子どもが水遊びを思いきり楽しめるよう、家庭や外出先でできる安全対策や、万が一の応急対応を看護の視点からお伝えします。

安全に、楽しい水遊びの時間になりますように・・!!
子どもが水遊び中に事故に遭いやすい理由


1. 身体能力・危険察知能力が未発達
乳幼児〜低学年の子どもは、筋力・平衡感覚が未発達です。
水中では浮力が働く一方で足元が不安定になり、簡単に転んでしまいます。
また、転んだ際に顔が水面についたままになると、パニックになり、立ち上がる動作ができなくなります。
さらに、「ここは滑りやすい」「流れが速い」という危険の察知や判断も未熟なため、自ら危険を回避することが難しいです。
2. 体温低下や体力消耗が早い
子どもは体表面積が大人に比べて大きく、体温を外気や水に奪われやすいです。
たとえ真夏でも、水温が28℃以下だと体が冷え、唇が紫色になったり震えが出ることがあります。
また、遊びに夢中になると疲労を感じにくく、急な倦怠感や動きの鈍化が見られることもあります。
3. 見守りの一瞬の油断が事故に
溺水事故は「静かに起こる」のが特徴です。
映画やドラマのような派手なバタ足や叫び声はなく、口や鼻が水に浸かったまま動きが止まり、数十秒で呼吸停止に至ることもあります。
保護者がちょっと日陰に移動したり、スマホを見た数十秒が致命的になる可能性があります。
家庭でできる安全対策5選


1. 浅いビニールプールでも必ず大人が付き添う
- 水深10cm程度でも乳幼児は溺れる可能性があります。
- 大人は必ずプールの縁に座るか、手の届く距離に立ち、目線は常に子どもに向ける。
- 複数の子が同時に遊ぶ場合は、子ども同士が押し合ったりぶつかって転倒する危険もあるため、人数に対して十分な大人の見守りが必要。
2. 水温と気温をチェックしてから遊ばせる
- 水温28〜30℃が目安。冷たすぎる水は低体温症、温かすぎる水は熱中症のリスクがあります。
- 家庭用プールなら、朝に水を張り、太陽で自然に温めてから使用。
- 気温との差が10℃以上あると体に負担がかかるため、温度差の大きい時間帯は避ける。
3. プール周囲の安全確保
- 床が濡れると非常に滑りやすくなります。
滑り止めマットやタオルを敷く。 - ホースやバケツなどの遊具は端に寄せ、子どもの動線を確保。
- ペットが走り回る環境では不意の接触事故も起こるため、一時的に隔離。
4. こまめな水分補給と休憩
- 水の中でも汗はかきます。
喉の渇きを感じにくいため、保護者が声をかけて飲ませることが重要。 - 麦茶、経口補水液、イオン飲料などを常備し、30分〜1時間おきに休憩。
- 休憩時にはタオルで体を拭き、日陰で体温を整える。
5. 遊び終了後のケア
- 遊び終わったら速やかにタオルで拭き、着替えさせる。
- 耳の中の水分は軽くタオルで拭き、炎症予防のため長時間水分が残らないようにする。
- 肌のかゆみや発疹、虫刺されなどがないか観察。
外出先でできる安全対策5選


1. 水深や流れの確認
- 川や海、流れるプールでは、見た目よりも水流が速い場合があります。
- 足がつかない深さは必ず大人と一緒に入る。
- 足元が砂利や岩だと滑りやすく転倒の危険大。
2. ライフジャケットや浮き具の活用
- 浮き輪やアームリングは転覆すると顔が水につく危険があるため補助的に使用。
- 海や川では必ずライフジャケットを着用。
ベルトが緩まないように調整。 - 体重や胸囲に合ったサイズを選び、年齢に応じた浮力基準を確認。
3. 見守り役を明確にする
- 「誰かが見ているだろう」ではなく、「今は私が見守り役」と宣言。
- 大人が複数人いる場合は、交代制で集中力を保つ。
- 見守り中はスマホ・読書・会話は最小限に。
4. 人が少ない時間帯・場所を選ぶ
- 混雑時は視界が遮られ、事故発見が遅れるリスクが高まります。
- 早朝や平日の午前中など、比較的空いている時間帯を選ぶ。
- 子どもには目立つ色(蛍光オレンジ、ライムグリーンなど)の水着や帽子を着用させる。
5. 緊急時の対応を知っておく
- 溺れている人は静かに沈みます。
顔が水面にあり、腕が広がって動きがない場合は危険信号。 - 自分が水に入らなくても助けられるように、棒や浮き具を使って引き寄せる。
- 呼吸や脈がなければすぐに心肺蘇生(人工呼吸+胸骨圧迫)を開始し、救急要請。
看護師が伝える!水遊び事故の応急対応


1. 溺れた場合(溺水)
溺水はわずか数十秒で命の危険に直結します。
「安全に水から引き上げる」→「呼吸・意識の確認」→「必要なら心肺蘇生」を行います。
引き上げ方
- 自分の安全を確保してから近づきます(流れがある場所や深場では無理をしない)。
- 棒や浮き具で引き寄せられるならそれを活用。
- 腕や肩をしっかりつかみ、水から引き上げます。
意識・呼吸の確認
- 胸や腹の上下動で呼吸があるかを見ます(10秒以内)。
- 呼吸がなければすぐに119番通報と心肺蘇生を開始。
- 子どもは呼吸停止から心停止になるのが早いため、通報と同時並行で人工呼吸を優先。
心肺蘇生(小児の場合)
- 人工呼吸2回から始める(口と鼻を一緒に覆って空気を送り込む)。
- その後、胸骨圧迫を1分間に100〜120回のペースで行う(胸の真ん中を約4cm沈む程度)。
- 圧迫と人工呼吸を30:2の割合で繰り返す。
意識がある場合
- 咳が出ているか、呼吸音がゼーゼーしていないかを観察。
- 水を飲んでいなくても、肺に少量の水が入り込んだ「遅発性肺水腫」が数時間後に出ることがあります。
- 帰宅後も呼吸が浅い・苦しそう・咳が続く・顔色が悪い場合はすぐ医療機関へ。
2. 転倒や打撲
水遊び場では滑りやすく、転倒による頭部打撲が少なくありません。
特に頭部外傷は「その時元気でも後から症状が出る」のが怖いポイントです。
危険サイン(すぐ受診)


応急処置
- 出血があれば清潔なタオルで軽く圧迫して止血。
- 腫れている場合は保冷剤をタオルで包み10〜15分冷却。
- 冷却中も意識や会話の様子を観察。
- 大きなたんこぶでも、意識レベルや動きに異常があれば受診。
3. 低体温症
夏でも長時間の水遊びや、曇り・風が強い日は体温が下がります。
子どもは大人より熱を奪われやすく、唇が紫色になる、震える、動きが鈍くなるなどが初期サインです。
応急処置
- 水から上げ、濡れた衣服をすぐに脱がせる。
- タオルや毛布で全身を包む。
- 日なたや暖房で体を温める。
- 暖かい飲み物(白湯、温かいお茶)を少しずつ与える。※意識がない場合は飲ませない。
- 湯たんぽやカイロを使う場合は、必ずタオルで包み、低温やけど防止。
- 強い震え、意識がぼんやり、呼吸が浅い場合は救急搬送。
4. 看護師からのアドバイス



不安な場合にはかかりつけ医に相談してみてください。
まとめ
水遊びは子どもにとって最高の夏の思い出ですが、事故は一瞬で起こってしまいます。
「手の届く距離で見守る」ことが最大の予防策です。



この夏、安全対策をしっかり行い、
家族みんなで笑顔いっぱいの水遊びを楽しんでください。
コメント