
「座って食べてほしいのに、すぐ立ち歩いてしまう…」
「保育園ではちゃんと食べているのに、家だと集中できないのはなぜ?」
こうしたお悩み、毎日のようにママたちから聞きます。
食事の時間は、親にとって“ゆっくりしてほしい時間”なのに、子どもにとっては “じっと座る”という大きな課題の時間。
特に2〜5歳頃は発達の途中であり、「立ち歩く」という行動にも意味があります。
この記事では、
- 幼児が食事中に立ち歩く発達的な理由
- 年齢ごとの“立ち歩きやすいポイント”
- 実際に使える優しい声かけ例
- 家では食べないのに、保育園では食べる理由
- 今日からできる「座って食べる習慣」の育て方
を、保育園看護師という立場から、やさしく・専門的に解説します。
まいこ@保育園看護師まま食事中の立ち歩きに悩むお母さんたちが、少しでもらくになりますように。
食事中に立ち歩く幼児の対応 — 発達に合わせたやさしい声かけと具体策


「座ってごはんを食べてほしいのに、すぐ立ち歩いてしまう」――
この悩みは多くの保護者が抱えるものです。
まず大切なことは、立ち歩く行動を“悪いこと”と決めつけないこと。
幼児期は発達の途中であり、体や心の成長段階が影響していることがほとんどです。
以下では年齢ごとの発達特性を丁寧に説明しつつ、実際に使える声かけ例と環境調整のコツを具体的にご紹介します。
最後に「保育園では食べるのに家では食べない」と悩む方への読み解き方と対応のヒントもまとめています。
食事中に立ち歩くのは「発達の一部」です
先に結論をもう一度。
立ち歩き=しつけの失敗、ではありません。
多くの場合、次のような「発達的」理由があります。
- 体の動きをコントロールする力(体幹、姿勢保持)が未発達
- 注意(集中)を持続する時間が短い
- 強い好奇心や感覚刺激に反応しやすい(動きたくなる)
これらは成長とともに変わります。大事なのは「今の子どもの状態を理解して、少しずつ座る力・規則性を育てる」ことです。
叱責や長い説教ではなく、簡潔で一貫した声かけと環境づくりが効果的です。
年齢別の詳しい解説と声かけ
【1〜2歳】:まずは「座ること自体がまだ難しい」段階
発達のポイント
- 体幹(おなか・背中の筋力)が未発達で、長時間同じ姿勢を保つのが疲れる。
- 咀嚼や飲み込みの技術がまだ不安定。食べる動作そのものにエネルギーが必要。
- 自己主張や好奇心が増え始め、目に入るものに素早く反応する。
よくある行動
- 一口で立って歩く
- 食器で遊ぶ・食べ物を触ってしまう
- スプーンを持ちながら移動
声かけと対応
短くて伝わるフレーズが有効。声のトーンは落ち着いて、表情は柔らかく。
- 「○○ちゃん、ここ(椅子)で食べようね」
- 「スプーンはここで使おうね。ママといっしょに座ろう」
- 「あと一口でおしまいにしようね(約束)」
実際に使うときは、声のトーンを変えずに落ち着いて何度か繰り返すのがポイント。
環境調整のコツ
- 椅子の高さを合うものに(足裏がつくか踏み台を用意)
- 食器は軽く、取り扱いやすいものに
- 初期は「5〜7分座れたら大成功」と認識する
褒め方のヒント
- 座れた瞬間にすぐ褒める(例:「座れたね、すごいね!」)
- 小さな成功を数回褒めて、次につなげる
【3歳】:座るトレーニングが本格化する時期 — 意欲とムラの混在
発達のポイント
- 自分で食べたいという自立心が高まる。
- 注意力は向上するが、気分や興味の波が依然として大きい。
- 言葉の理解が進むため、簡単なルールの共有が可能。
よくある行動
- 最初は座って食べるが途中で飽きる
- 会話したくて立ち上がる(注目を求める)
- 食べるより遊びを優先してしまう
声かけのポイント
3歳児は言葉が通じやすいので、選択肢を与える声かけが効果的です。
子どもが主体感を持てると協力しやすくなります。
- 「今は食べる時間だよ。終わったらいっぱい遊ぼうね」
- 「席で少し待てる?5つ数えたらお皿を見るよ」
- 「立ちたくなったら、手を挙げて教えてね」
「手を挙げる」などの小さなルールを決めると、立ち上がる頻度が減ります。
環境・流れの工夫
- 食事の前にトイレや水分を済ませておく(中断の理由を減らす)
- 食卓の会話を取り入れて“楽しい時間”にする
- 食事の前に短いルール(例:座ってからお祈り・歌など)を習慣化する
褒め方のヒント
- ルールを守れたら「自分でできたね」と自尊心を育てる褒め方を
- 「ありがとう」「うれしいよ」と感情に寄り添う言葉を添える
【4〜5歳】:自制と社会性が育つ時期 — 自己管理の練習が効く
発達のポイント
- 姿勢の保持や手先の器用さがかなり発達してくる。
- 他者との関係(会話のキャッチボール、順番を守る力)が育つ。
- 自分で考えて行動する力が伸びるため、意思決定の機会を与えると伸びる。
よくある行動
- 会話に夢中で立ち上がる
- 兄弟の動きにつられて席を離れる
- 「おかわり」や「遊び」に向かって移動する
声かけのポイント(具体例)
問いかけや選択肢を与え、自己統制を促す言い方が効果的です。
- 「どうしたら座って食べられると思う?」(自分で考えさせる)
- 「お椀を取りに行ってくれる?でも、席に戻るのを忘れないでね」
- 「あと3分でお片づけ。終わったらゲームしようね」
自分で決めたルールほど守りやすくなります。
環境・流れの工夫
- 食事のルールは3つ以内に絞る(例:座る・手を洗う・待つ)
- 家族で同じルールを守る(親も席を立たない)ことで一貫性を保つ
- 役割を与える(配膳の手伝いなど)は責任感を育てる
褒め方のヒント
- 自主的にできたことを見逃さずに即時で褒める(即時フィードバック)
- 小さな達成に対して具体的に褒める(「お椀を持って席に戻れたのがすごいね」)
保育園では食べるのに家では食べない――その理由と読み解き方


この相談は本当に多いです。
理由は主に3つあります。
① 集団のリズムや模倣効果
- 保育園ではまわりの子が座って、一緒に食べるリズムがあるため、子どもはそのテンポに合わせやすいです。
- 集団は強力な「行動の引力」になります。
② 家は「甘えの場」だからこそ行動に余裕が出る
- 家では親に甘えたくて、わざと立つ・食べるふりをすることが出ます。
- これは「家だから見せる別の顔」であり、発達的にも自然です。
③ 家の刺激が多い(テレビ・おもちゃ・兄弟)
- 家庭環境は誘惑が多く、保育園より注意を引くものがたくさんあります。
- 視覚・音の刺激が多いと、集中はそがれやすいです。
対応のコツ
- 保育園の良い部分(みんなで食べるルールや時間の流れ)を家で真似てみる(例:みんなで同じ曲を1回だけ歌ってから食べる)
- 家での「甘え表現」を受け止めつつ、ルールは一貫して伝える
- 刺激を減らす(テレビを消す、片付けたおもちゃは視界に入れない)
実践的なステップ:今日から始められる5つのこと


① 「スタートの一口」を用意する
座った瞬間に“待たなくていい”状態をつくる
子どもが立ち歩く理由のひとつは、
「空腹なのに、目の前にまだ食べられるものがない」 という“待ち時間のストレス”。
特に1〜3歳は、
「座って待つ」が発達の特性上まだ難しい年齢です。
この“待ち時間ゼロ”の工夫だけで、座る時間が伸びます。
具体例
- おにぎりを一口サイズで置いておく
- 野菜スティック・果物ひとかけ
- すぐに食べられるスープを先に出す
声かけ例
- 「座ったら、すぐ食べられるよ〜!ここに一口めがあるよ」
- 「最初のひとくち、おいで。どれにする?」
ワンポイント
ママが盛りつけている後ろ姿を見ているだけでも、子どもには“待つストレス”。
座った瞬間「食べられる状態」は、それだけで安心材料になります。
② 短いルールを決める(3つまで)
幼児の“理解できる容量”に合わせる
幼児は一度にたくさんの約束を覚えられません。
そのため家庭では 3つ以下 が現実的で守りやすく、達成しやすいです。
例
- 手を洗う
- いすに座って食べる
- 食べ終わったらお皿を運ぶ
声かけ例
- 「今日の約束は3つだけだよ。ママと同じポーズで言ってみよう」
- 「座って食べられたら1つクリアだね!」
なぜ立ち歩きが減る?
“何をすればいいのか”が明確になると、
子どもは自分で行動をコントロールしやすくなります。
怒られる曖昧な理由が減る → 自信につながる → 行動が安定する、という流れ。
③ 成功体験を「すぐ」褒める
食事行動を“強化する”仕組みをつくる
子どもは褒められた行動を繰り返す性質があります。
特に 成功した2〜3秒以内の“即褒め” は最も効果的。
具体例
- 座った瞬間
- スプーンを手に取ったとき
- 一口食べたとき
声かけ例
- 「今、自分で座れたね!すごい!」
- 「お皿から目を離さずに食べてるね、かっこいいね」
- 「一口め、勇気出したね!」
保育園で“食べる子”になれる理由
園では、保育者が「行動に対する即フィードバック」を常に行っています。
そのため家庭でも同じ方向性で褒めると、行動が統一されやすくなるのです。
④ 「頼む日」を家族で共有する
親の“気力の消耗”を防ぐ仕組み作り
毎日完璧に向き合うのは無理。
その現実を前提にして、家庭で“負担が軽い日”をつくるのはとても大切です。
例
- 「今日はママのラッキーデー(時短ごはんの日)」
- 「今日はパパがメイン対応の日」
- 「冷凍ストック or 市販ベビーフードに頼る日」
家族で共有すると良い理由
- 罪悪感が減る
- パートナーからの理解が得られる
- 子ども自身も“ごはんは安心の時間”と認識しやすい
声かけ例
- 「今日はママがちょっと疲れてる日。お助けごはんで一緒に食べよう」
- 「今日はパパの日!パパと楽しく食べようね」
完璧に頑張らなくてもいい。
ママが笑っているほうが、子どもの食の発達はずっと伸びます。


⑤ 環境を整える
立ち歩きの“引き金”を減らす
幼児は気が散る刺激に影響されやすく、
「テレビ」「おもちゃ」「届く距離のもの」があるだけで立ち歩きやすくなります。
今日できる環境調整
- テレビ・動画は完全にオフ
- 机の上には食べるものだけ
- おもちゃは別室 or 死角へ
- 手が届くところに水とおしぼり
- いすの高さを見直す(足がつくと安定する)
声かけ例
- 「ごはんの時間は、見るものはごはんだけにしようね」
- 「おもちゃさんは今お昼寝中。食べ終わったら起こしにいこうね」
なぜこれだけで座る?
幼児は「誘惑が視界にある=そっちへ移動したくなる」が自然な反応。
環境調整は“やらない選択肢を先に消しておく”イメージです。



毎日の積み重ねが、子どもの“安心”と“食べる力”につながります。
立ち歩く行動には理由があります。
- 発達的にまだ座り続けるのが難しい
- 刺激が多い
- 待ち時間が長い
- 成功体験が少ない
どれも「ダメな子だから」ではありません。
ただ、その行動の裏にある“困っているポイント”に寄り添いながら、
少しずつ環境と関わり方を整えていくと、
子どもは驚くほど落ち着いていきます。
そして、何より大切なのは――
ママやパパがひとりで抱え込まないこと。



「ちょっと今日は頼る」「今日は無理しない」その選択が、明日の食卓の笑顔を守ってくれます。
立ち歩きが多くて困ったときのチェックリスト


子どもの立ち歩きには、実は“ちょっとした理由”が隠れていることが多いもの。
「うちの子だけ?」と悩むのではなく、
“見直すヒント”としてゆるく使ってもらえるチェック項目 にまとめました。
どれか一つでも、少し整えるだけで食卓がぐっとラクになります。
食事時間、長くなりすぎていませんか?
めやすは…
- 2歳:5〜7分
- 3歳:10分前後
- 4〜5歳:15分以内
この時間を大きく超えると、集中が切れて立ち歩きやすくなります。
「短めで終わってOK」と思えるだけで、ママの心も軽くなります。
いすとテーブルの高さ、合っていますか?
足がブラブラしていると、身体が安定せず立ち歩きやすくなります。
足がつく・姿勢が保ちやすい が大切。
もし合わない場合は、
タオルやステップを使うだけでも落ち着きやすくなります。
食べ始める前に、トイレ・水分は済ませていますか?
途中で「のど乾いた」「トイレ…」があると、自然と席を立つ回数が増えてしまいます。
スタート前に一度リセットしてあげると、座りやすさにつながります。
食卓のまわりに“誘惑”はありませんか?
テレビ・おもちゃ・お気に入りの本…
視界に入るだけで「そっちへ行きたい!」が自然に出てきます。
完璧に片づけなくてもOK。
「今見えなければいい」くらいのゆるさで十分 です。
保育園と家の“違い”に気づけていますか?
園では座って食べられるのに、家では歩く…これはよくある相談です。
ポイントは、
- 食べる時間
- お皿の出し方
- 食卓のにぎやかさ
- 座る前の声かけ
- スタートまでの流れ
このあたりのちょっとした違いが、子どもにとっては大きく感じられることがあります。
「同じにしなきゃ」ではなく、
“少しだけ園の良いところをお家に取り入れてみる”感覚でOK。



ゆるく整えるだけで、立ち歩きは自然と減っていきます
どれも「できてないとダメ」ではなく、
“子どもが座りやすくなるお手伝い” のようなもの。
ママやパパがすべてを完璧にしなくて大丈夫。
ひとつずつ試しながら、お家に合う形を見つけていけばOKです。
その積み重ねが、子どもの「座って食べられた!」という成功につながっていきます。
それでも気になる場合は


ほとんどは発達の範囲内ですが、次のような場合には一度小児科や保育相談窓口に相談すると安心です。
- 集団場面・家のどちらでも極端に集中が続かない(極端な不注意)
- 食べ物を飲み込めない・むせることが頻繁にある(嚥下の問題)
- ほかの発達面(言葉・動作・対人関係)にも気になる点が複数ある
相談は早めが安心です。



専門家は親の不安を取り除き、適切な支援の道を一緒に探してくれます。
一番大事なことは「小さな積み重ね」と「親の心の余裕」


子どもは一朝一夕で変わりません。
けれど、毎日の小さな成功体験(座れた、静かに食べられた、ルールを守れた)を積み重ねることで、徐々に「座る力」は育ちます。
そして、親の関わり方も大切です。
短く・一貫した声かけ、ほめること、環境を整えることを続けることで、家の食卓は少しずつ変わっていきます。
今、つらさを感じているあなたへ――
完璧である必要はありません。
今日座れた時間をほめて、明日も小さな一歩を一緒に目指していきましょう。



あなたのやさしい声かけが、子どもの成長を支えています。









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