はじめに:鉄分・たんぱく質って…ほんとにそんなに大事?

離乳食が始まると、SNSや育児書でよく目にする言葉があります。
「鉄分が不足しやすい」
「たんぱく質をしっかりあげましょう」
読めば読むほど、
「うちの子、足りているのかな…」
「なんか急に不安になってきた…」
そんな気持ちになるママは多いです。
私も、看護師でありながら、わが子の離乳食では同じように迷ったひとりでした。
実は、“不足しやすい”というのは事実だけど、正しく知れば怖がる必要はありません。
毎日完璧に気を張る必要はなく、「ちょっと意識する」だけで自然と補える栄養素なんです。
この記事では、
- 専門的な情報
- 看護師としての視点
- そして、同じ“ママ”としてのリアルな体験
この3つを混ぜながら、できるだけ 安心につながる形 でお伝えしていきます。
まいこ@保育園看護師ままどうか、肩の力を抜いて読んでみてくださいね。
1. なぜ離乳食期は“鉄不足”になりやすいの?


離乳食の相談でとても多いのが
「鉄ってそんなに大事なんですか?」
「母乳だけじゃ足りないの?」
という声。
実は、これには赤ちゃんの体の仕組みが関係しています。
生まれたときにもらっている“貯蔵鉄”が減っていくから
赤ちゃんはお腹の中にいるとき、
とくに妊娠後期になると、ママから必要な鉄をしっかり蓄えて生まれてきます。
これが 「貯蔵鉄(ちょぞうてつ)」。
生まれたばかりの赤ちゃんは、この貯蔵鉄のおかげで、
母乳中心の生活でも元気に過ごせています。
でも——
生後6ヶ月ごろを境に、赤ちゃんの成長が一気に加速します。
- 体重がぐんぐん増える
- 血液量が増える
- 運動量が増える
こうした成長のために、鉄を使うスピードが急に早くなります。
その結果、もともと持っていた貯蔵鉄が少しずつ減り、
“食べ物から鉄を補う必要が出てくる” のがちょうど離乳食が始まる時期なのです。
母乳やミルクだけでは補いきれない理由
母乳にもミルクにも鉄は入っています。
ただし…
- 赤ちゃんの急な成長スピード
- 血液を作るための鉄の必要量の増加
これらを考えると、生後6ヶ月以降は 飲み物だけでは不足しやすい ことがあります。
「母乳が悪い」という話ではもちろんなく、
成長が順調だからこそ必要量が増える という自然な流れです。
離乳食の中に、鉄をふんわり足せる日があれば安心です。
毎回きっちりでなくても、できる範囲で取り入れていければOKです。
赤ちゃんの鉄不足が心配になる理由
鉄は、赤ちゃんにとって
- 脳や神経の発達
- 体の免疫
- 元気に動くためのエネルギーづくり
などに関わる大切な栄養素。
ネットで検索すると「鉄不足=怖い」という情報も多く、不安になりがちですが…
離乳食の段階で“毎日完璧に鉄をとらないといけない”という意味ではありません。
大切なのは、
「鉄が多い食材を少しずつ取り入れていければOK」
というシンプルな視点です。
2. たんぱく質が大事な理由


たんぱく質はよく「体の材料」と言われますが、実際にはそのイメージ以上に、赤ちゃんの発育に欠かせない役割をたくさん担っています。
赤ちゃんの体は毎日ものすごいスピードで成長しています。
身長や体重だけでなく、筋肉・内臓・皮膚・脳・免疫…ほぼすべてがこの時期につくられ、整っていく最中です。
その“材料”として必要なのが、たんぱく質です。
具体的には、たんぱく質はこんなところに関わっています。
- 筋肉や臓器の成長
体のサイズが大きくなるだけではなく、中身をつくる材料にもなっています。 - 血液のもとになる
酸素を運ぶ赤血球など、血液中の成分の多くはたんぱく質が基盤です。 - 皮膚や髪の材料
生まれてから急に肌トラブルが出てきたり荒れやすくなる時期でもあり、肌をつくる材料としても重要。 - 免疫を支える
病気を防ぐ免疫細胞や抗体もたんぱく質から作られます。感染症が多い季節は特に大切。 - ホルモン・酵素の材料
身体が働くための「指示役」や「調整役」もたんぱく質によって作られます。
こうした働きがあるため、離乳食期は “不足しやすい” というよりも、
「体の成長に合わせて必要量がしっかり増える時期」 と言ったほうが近いかもしれません。
とはいえ、難しく考える必要はありません。
毎食しっかり食べさせなきゃ…と気負うよりも、
「今日の離乳食に、たんぱく質の食材がちょこんと入っていれば十分」
そんな感覚で少しずつ取り入れていけば、赤ちゃんの体は自然と必要なものを作っていけます。
3. 月齢別|だいたいの目安量


ここでは、育児書のような細かい数値はあえて出しません。
赤ちゃんの食べる量には大きな個人差があり、毎日“きっちり”合わせる必要はありません。
「なんとなく、この時期はこれくらいが目安なんだな」
と軽く知っておくだけで十分です。
初期(5–6ヶ月)|まだ“慣れる”が目的
この時期は、栄養よりも “スプーンに慣れること” が大切。
鉄もたんぱく質も「ほとんど食べられない」「すぐに嫌がる」などは普通のことです。
目安
- たんぱく質:豆腐なら小さじ1〜2(5〜10g程度)
- 鉄:卵黄やしらすを “触れる程度・味見程度” でOK
初期は“飲み込む経験”を積む段階なので、量は気にしなくて大丈夫。
食べられた日があれば「今日は進んだね」くらいの気持ちで十分です。
中期(7–8ヶ月)|少しずつ栄養も意識し始める時期
舌でつぶせる固さに慣れ、食べられる種類や量がゆっくり増えていく時期。
この頃になると、栄養が「まったく食べられない」段階を抜けて、
“ちょっとプラスする” が現実的にできるようになってきます。
目安
- たんぱく質:1日 小さじ2〜3(豆腐なら30g前後)
- 鉄:1日に1回、「鉄がある食材を少し入れる」くらいでOK (例:しらす、卵黄、赤身魚、鉄強化ベビーフードなど)
まだムラが大きく、食べない日もあります。
1週間くらいでならして考えるとずっと気が楽になります。
後期(9–11ヶ月)|栄養バランスが整えやすくなる時期
この頃になると、食べる形状も量も大きく変わります。
1日3回の離乳食が安定し始め、体の材料になるもの(たんぱく質)+鉄を含む食材を自然と取り入れやすくなります。
目安
- たんぱく質:1日20〜30g(肉・魚・豆類の合計) ※ミートソースなら大さじ1〜2、鮭ならフレーク大さじ1弱などで十分
- 鉄:主食またはおかずのどこかに“少し”入っていればOK (例:ツナ、赤身肉、納豆、鉄強化シリアル、鉄入りベビーフード)
この時期は、体重・身長の伸びがぐんと大きくなるため、
「毎日ちょこっとずつの積み重ね」がとても役立ちます。
完了期(1歳〜)|取り分けが増え、鉄が不足しやすい時期
1歳を過ぎると、家族と同じメニューに近づきますが、
実はこの時期が一番、鉄不足の相談が多い と言われています。
理由は、
- 大人食は鉄が少ないことが多い
- 食べむらが増える
- 運動量が急に増える
など。
そのため、取り分けだけの日が続くよりも、
「鉄を含む食材やメニューを1日1回」 取り入れられると安心です。
目安
- たんぱく質:1食あたり15〜20gほどのイメージ (肉団子1〜2個、魚のフレーク大さじ1〜2、卵¼個 など)
- 鉄:1日1回、鉄のあるおかず・シリアル・スープなどをプラス
完了期は食べられる量が日によって大きく変わります。
1日で完璧にしなくて大丈夫。
“1週間の中で、ちょっとずつ” がちょうどいいバランスです。
4. 鉄分&たんぱく質がとれる食材一覧


「で、実際に何を買えばいいの?」
離乳食の相談で一番多いのが、この“具体的な食材”の部分です。
ここでは、日常でとり入れやすいものだけをまとめました。
全部を使う必要はありません。
あなたの家庭で使いやすい食材を、2〜3種類だけ知っておけば十分です。
鉄がとれる食材
鉄には「吸収されやすいもの」と「ゆっくり吸収されるもの」があります。
離乳食では、どちらも“負担にならない範囲で少しずつ”入れられたらOKです。
吸収されやすい“動物性の鉄”(ヘム鉄)
これは体にスッと入りやすい鉄。
成長期の赤ちゃんに特に役立ちます。
- 牛の赤身(そぼろ・うす切りが使いやすい)
- 豚の赤身(脂が少なく、後期〜完了期におすすめ)
- 鶏レバー(ペーストなら初期〜少量からOK、無理に使わなくても大丈夫)
- まぐろ・かつおなどの赤身魚(フレーク状にほぐすと便利)
- しらす(加熱済みで使いやすい)
- 卵黄(初期~中期の“鉄の入り口”として優秀)
ポイント
赤身肉・赤身魚は、実はたんぱく質も同時にとれる“二刀流食材”。
中期〜完了期で特に使いやすい存在です。
ゆっくり吸収される“植物性の鉄”(非ヘム鉄)
吸収率はゆっくりですが、日常的に加えやすいのはこちら。
- ひじき(後期〜完了期に。混ぜるだけで鉄が補える万能)
- 大豆・きなこ(きなこはおかゆやヨーグルトに混ぜるだけ)
- 小松菜(離乳食では使いやすい鉄源)
- ほうれん草(アク抜きすれば初期〜使える)
ポイント
植物性の鉄は「ビタミンCのある食材(じゃがいも・ブロッコリー・果物)」と合わせると吸収がUPします。
無理に意識しなくても、普段の離乳食で自然と組み合わせやすいですよ。
たんぱく質がとれる食材
たんぱく質は「体をつくる材料」。
鉄のある食材と重なるものも多く、実はそこまで複雑ではありません。
- 肉(鶏・豚・牛) → 初期はささみ・鶏むねを少量から。後期〜赤身肉へステップアップ。
- 魚(白身 → 赤身へ) → 初期は“白身魚の王道”。中期以降はまぐろ・かつおも使いやすい。
- 豆腐 → 初期から定番。食べてくれない日の救世主。
- 高野豆腐 → たんぱく質と鉄がどちらもとれる“優秀すぎる食材”。
- 卵 → 卵黄→全卵へ少しずつ。完了期は鉄源にも。
- しらす → 鉄・カルシウム・たんぱく質が一度で入る。どの時期も使える。
- ヨーグルト(完了期〜) → 朝食・おやつ代わりにもなる便利食材。
「結局どれを常備しておけばいいの?」への答え
迷ったら、以下の“鉄+たんぱく質がとりやすい3つ”だけでOKです。
- しらす(初期〜。加熱済みで最強の時短)
- 赤身魚(まぐろ・かつお)(中期〜。鉄もたんぱく質も両方とれる)
- 高野豆腐(後期〜。煮るだけで栄養がととのう)
これさえ冷蔵庫・冷凍庫にあれば、毎日バランスを整えるのがぐっと楽になります。
5. 月齢別のおすすめレシピと組み合わせ


どの時期でも一番大切なのは “食べやすい形にすること”。
栄養がしっかりあっても、固すぎたりパサついたりすると赤ちゃんはうまく飲み込めません。
看護師としても、ママとしてもここは本当に痛感したポイントです。
初期(5〜6ヶ月)|とにかく“なめらか”が最優先
豆腐ペースト
- 作り方: 絹ごし豆腐を電子レンジで数秒温めて、水 or 湯冷ましでのばす
- ポイント: たんぱく質の導入にぴったり。クセがなく食べやすい
白身魚のペースト
- 作り方: しっかりゆでて骨を取り、すりつぶす
- ポイント: 白身魚は脂が少なく初期向け。少量でOK
きなこ+おかゆ
- 作り方: 10倍がゆに“指先でつまむ程度”のきなこを混ぜる
- ポイント: 鉄とたんぱく質をほんのりプラスできる便利技
中期(7〜8ヶ月)|風味や食材の組み合わせに慣れる時期
ささみと野菜のとろとろ煮
- 栄養: たんぱく質+ビタミン
- ポイント: 片栗粉でとろみをつけるとまとまりやすく食べやすい
赤身魚のおかゆ(かつお・まぐろ)
- 理由: 赤身魚は鉄がしっかり含まれている
- ポイント: 少量を細かくほぐして混ぜるだけで自然に鉄アップ
豆腐×ひじきのとろみ煮
- 栄養: 鉄(ひじき)+たんぱく質(豆腐)
- ポイント: ひじきは戻して細かく刻むと食べやすい
後期(9〜11ヶ月)|“歯ぐきでつぶせる固さ”が目安
肉・魚のそぼろ風
- ポイント: パサつきやすいので、水分(だし)を多めに
- メリット: 少量でたんぱく質が確保しやすい形
赤身魚と野菜の煮物
- 理由: 赤身魚=鉄源、野菜=ビタミンで吸収アップ
- ポイント: 具材は1cm弱の細かめが食べやすい
高野豆腐のそぼろ煮
- 栄養: たんぱく質豊富で扱いやすい
- ポイント: だしを吸って柔らかくなるため、後期におすすめ
完了期(1歳〜)|“取り分け+一工夫”で鉄不足を防ぐ
取り分けの薄味バージョン
- 例: 肉じゃが・煮物・ハンバーグなど
- ポイント: 赤ちゃん用に取り分けて“あとから薄める”ほうが楽
肉団子・つみれ(手づかみOK)
- メリット: 自分で食べたい欲が出てくる時期にぴったり
- 鉄UP: 鶏肉+豆腐でふんわり、または豚・牛で鉄量アップ
鶏そぼろ+野菜+ごはんで“一皿完成”
- ポイント: 忙しい日にも栄養バランスが取りやすい
- 応用: うどん・おやき・おにぎりにも展開できる
6. 足りていないか不安になったときのチェックリスト


専門的な話ではなく「家庭で気づけること」を中心に。
- 主食(ごはん・パン)ばかり食べていない?
- おかずに肉・魚・豆類は1回でも入ってる?
- 固さが合っている?(固すぎると食べない)
- 週に数回でも赤身肉や赤身魚の出番がある?



このあたりをざっくり見て「なんとなく入っていれば」十分です。
7. ママたちのよくある悩みQ&A


Q. 肉や魚を全然食べてくれません…
これは本当に多い悩み。
- とろみをつけて飲み込みやすくする
- 野菜ペーストに混ぜて味をなじませる
- “そぼろ状”を避けて、とろっとした形にする
- 同じ食材でも調理法を変える(蒸す→煮る→焼く)
「食べない=嫌い」ではなく、
形状や水分量が合っていないだけ のことがとても多いです。
Q. 鉄入りシリアルや市販ベビーフードに頼ってもいい?
いいです。
生活をラクにするために上手に頼って良いと思います。
鉄入りシリアルは鉄吸収率が高く、取り入れる価値があります。
毎日じゃなくてOK。
食欲が落ちた日やバタバタの日に使うだけでも十分です。
Q. 卵・乳製品はどう扱えばいい?
- 卵:全卵は後期〜
- 乳製品:完了期〜少しずつ
段階を守れば安心して使えます。
Q. 結局「どれくらい食べていたら足りてる」っていえるの?
専門的に細かく考える必要はありません。
“1日にどこかで肉や魚などの鉄がとれる食材をひと口でも食べていれば◎”
“たんぱく質は、豆腐・肉・魚などを1〜2品取り入れられていれば十分”
つまり、
完璧を狙わなくても、1日に少しずつ入っていれば安心です。
8. 保育園看護師ママのリアルな工夫
私自身、育児をしながら働いていたころは、
「ちゃんと作らなきゃ」
「市販のものに頼るのは良くないのかも…」
と、どこかで後ろめたさを感じていました。
周りのママが手作りしていると聞くたびに焦ったり、
仕事でクタクタの日にパウチを開けるだけで済ませると、胸がチクっとすることもありました。
でも、保育園で毎日たくさんの赤ちゃんに関わり、
自分でも子育てをする中で気づいたことがあります。
市販の離乳食に頼る日は「手抜き」じゃなくて、「自分を整える日」なんだということ。
ママの心の余裕は、赤ちゃんが安心して食べるための大切な土台です。
無理して毎食を手作りで頑張るより、
しんどい日には市販に助けてもらったほうが、結果的に子どものためにもなります。
そんな気づきから、私は離乳食を“完璧にしよう”とは思わず、
「できる範囲」で続けられる工夫を意識するようになりました。
具体的にはこんな感じです。
① 週に数回「鉄を必ず入れる日」を作る
たとえば、
まぐろ・牛赤身・豚ヒレ・卵黄・鉄入りシリアルなど。
毎日じゃなくてOK。
“今週はこの日とこの日だけ意識しよう”くらいがちょうどいいです。
② 野菜スープ+肉 or 魚を“混ぜるだけ”の日をつくる
頑張らなくても栄養がととのう組み合わせ。
味の相性もよく、食べやすくしてあげられます。
③ 食べない日は深追いしない
離乳食が“修行”みたいになると、ママも赤ちゃんもつらくなります。
そんな日は、
「今日はこういう気分なんだな」
と、観察するつもりで向き合うくらいで大丈夫。
“食べない日があって当たり前”という視点を持つだけで、気持ちがラクになります。
こんなふうに、
「がんばりすぎない工夫」を積み重ねていくことで、
離乳食はずっと続けやすくなります。
9. まとめ|鉄とたんぱく質は“少し意識すれば自然ととれる栄養”


鉄分やたんぱく質は大切。
でも、完璧じゃなくていい。
毎日じゃなくていい。
大事なのは 「できる範囲で、ちょっと意識する」 という姿勢だけです。
離乳食は、赤ちゃんのためだけでなく
ママの心のゆとりも大切にしていい時期。
赤ちゃんが楽しく食べられて、
ママも無理なく続けられること。
その先に自然と「必要な量」がついてきます。



赤ちゃんとの食事時間が少しでも心地よいものになりますように。










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