はじめに

子どもは誰でも甘いものやお菓子が大好きです。
スーパーに行くたびに「これ買って!」「お菓子食べたい!」とせがまれて困った経験は、多くの親御さんに共通する悩みではないでしょうか。
お菓子をまったく食べさせないのは難しいし、禁止することで余計に執着してしまうこともあります。
けれど、食べ過ぎは肥満や虫歯、生活習慣病のリスクにもつながります。
では、子どもがお菓子ばかり欲しがるとき、親はどんな対応をすればよいのでしょうか。
保育園看護師として、また子育て中の母としての経験をふまえ、「食べ過ぎ防止」と「お菓子との上手な付き合い方」について解説していきます。
子どもがお菓子を欲しがる理由

お菓子を欲しがるのは、単なる「ワガママ」ではありません。背景にはいくつかの理由があります。
1. 本能的に甘い味を好む
人間の赤ちゃんは、生まれつき「甘い味」が好きだといわれています。
母乳にもほのかな甘みがあり、甘さは安心感や心地よさにつながります。
そのため、子どもが甘いお菓子に惹かれるのは自然なことなのです。
2. エネルギー源として手っ取り早い
成長期の子どもは活動量が多く、すぐにエネルギーが不足します。
糖分を多く含むお菓子は、体にすぐエネルギーを補給できるため、欲しがりやすいのです。
3. 習慣化・条件反射
「スーパーに行ったらお菓子を買ってもらえる」「ご飯のあとにデザートがある」など、日常のルールや習慣としてお菓子が組み込まれていると、子どもは無意識に欲しがってしまいます。
4. 心の満たされなさ
退屈なときや寂しいとき、気分転換したいときに「お菓子=ごほうび・気分を変えるもの」として欲しがる場合もあります。
お菓子は食欲だけでなく「情緒の支え」としても機能しているのです。
食べ過ぎによるリスク

お菓子は「完全に禁止すべきもの」ではありません。
適量を楽しむことは子どもの心の満足感やリフレッシュにもつながります。
ただし “食べすぎ” は、子どもの体や心にいくつもの悪影響を及ぼす可能性があります。
① 虫歯のリスク
砂糖は、口の中の細菌(ミュータンス菌など)の“エサ”になります。
これらの菌は糖を分解して酸を出し、歯の表面(エナメル質)を溶かして虫歯をつくります。
- とくに危険なお菓子
キャラメル・グミ・チョコなど、歯にくっつきやすいものは長時間口の中に糖が残るため虫歯リスクが高まります。 - 飲み物も要注意
ジュースや乳酸菌飲料を“ちょこちょこ飲み”していると、口の中が常に酸性状態になり、歯の再石灰化が追いつかなくなります。

② 栄養バランスの崩れ
お菓子は糖質と脂質が中心で、ビタミン・ミネラル・たんぱく質が不足しています。
そのため、お菓子を食べすぎると以下のような問題が起きやすくなります。
- 鉄分不足 → 貧血や集中力低下
- カルシウム不足 → 骨や歯の発達に影響
- ビタミン不足 → 免疫力の低下や肌荒れ
また「お菓子でお腹いっぱい → ご飯を食べない」という悪循環に陥ると、成長期に必要な栄養素をとり逃してしまいます。

③ 肥満や生活習慣病への影響
幼少期から砂糖や脂質の多い食べ物を常習的に摂りすぎると、 肥満・高血糖・高血圧 のリスクが高まります。
- 小児期肥満の40〜80%は大人になっても肥満に移行する といわれている
- 幼少期の食習慣は「味覚」をつくるため、甘いものに慣れすぎると大人になっても砂糖依存に陥りやすくなる
さらに、肥満は将来の糖尿病や脂質異常症など 生活習慣病の入り口 になりかねません。

子どもにとってお菓子は楽しみのひとつ。

禁止するのではなく、「量・タイミング・内容」を工夫すること が健やかな成長につながります。
上手なルール作りと工夫


「お菓子=悪いもの」と一方的に禁止すると、逆に子どもの欲求が強まり、隠れて食べたり、爆発的に食べてしまうこともあります。
大切なのは 「ルールを決めて、親子で共有すること」。
ここでは、家庭で取り入れやすい工夫を詳しく紹介します。
① 時間を決める
おやつの時間を「午後3時」と決めることで、だらだら食べを防ぐことができます。
これは単に虫歯予防のためだけでなく、子どもの 生活リズムの安定 にもつながります。



「おやつの時間」を固定することで、食欲のリズム・排便のリズムも整いやすくなります。


時計を見ながら待つ習慣は、時間感覚や我慢する力(自己調整力) を育てるトレーニングにもなります。
② 量を決める
大袋からそのまま出すと「どこまで食べていいのか」が曖昧になり、つい食べすぎてしまいます。
小分けにして「これが今日の分」と見せることで、子どもも安心して区切りをつけやすくなります。
- 小分け袋のお菓子を選ぶ
- 家でジッパー袋やおやつ用タッパーに分けておく
- お皿に盛って渡す





視覚的に量がわかると、子どもも「もっと欲しい!」と感じにくくなります。
③ 種類を工夫する
おやつ=スナックやチョコではなく、栄養を補える食品を取り入れると安心です。
お菓子を 「補食」 として位置づけると、子どもの成長に必要な栄養素を補えます。
- 果物 ビタミン・食物繊維補給
- おにぎりや蒸しパン 主食補助、腹持ちがいい
- 干し芋やチーズ 鉄分・カルシウム補給
- ヨーグルト 腸内環境改善
④ 親の態度を一貫させる
「今日はダメって言ったのに、泣いたら買ってくれた」
この経験が繰り返されると、子どもは 「泣けば欲しいものが手に入る」 と学んでしまいます。
これは心理学でいう 強化学習 の一種で、一度学習してしまうと修正が難しくなります。
親の態度を一貫させることが、子どもに安心感とルール理解を与えるのです。
- 買い物に行く前に「今日はおやつは買わないよ」と伝えておく
- 泣いてもルールは曲げない
- 代わりに「おやつ以外の楽しみ」を用意しておく(シール帳、手作りおやつ、果物など)


子どもは「制限されること」に敏感ですが、同時に「一貫したルール」があると安心します。



時間・量・種類を工夫し、親子で共有することで「お菓子との健全な付き合い方」が自然と身についていきます。
「欲しがりすぎる」場面での声かけと対応


子どもが「お菓子食べたい!」と大騒ぎする場面は、どの家庭でも日常茶飯事。
ここで親がどう対応するかによって、子どもの 自己調整力(気持ちをコントロールする力) や 食習慣の定着 に大きく影響します。
大切なのは、
- 頭ごなしの「ダメ!」ではなく
- 「気持ちを受け止めながら、ルールに沿って導く」こと。
具体的な場面ごとにみていきましょう。
① スーパーで欲しがるとき
スーパーは子どもにとって“誘惑の宝庫”。
レジ前のチョコやキャンディはまさに「欲しくなる」仕掛けです。
- 買い物前に「今日は〇〇を買うよ。お菓子は買わないよ」と伝えておく
- 買い物リストを一緒に確認して、「今日は夕飯の材料だけ」と“見える形”で示す
- 買い物のお手伝い(カゴを持つ、野菜を選ぶ)をお願いして、意識をそらす





「ダメ」だけで終わらせず、“役割”を持たせることで気持ちが切り替わりやすくなります。
② ご飯前に欲しがるとき
お腹が空いているときは「どうしても食べたい!」という気持ちが爆発しやすいです。
でもここでお菓子を食べると、夕食を食べられなくなる悪循環に。
- 「ご飯を食べたら、あとで少し食べようね」と“先延ばし”を提案する
- おにぎり・チーズ・バナナなど“お腹にたまる健康的な軽食”で代替する
- 冷蔵庫に「お菓子OKリスト(親が用意したもの)」を作っておき、子どもに選ばせる





選択肢があることで、子どもは「自分で決められた」と感じ、納得しやすくなります。
③ 感情的に泣き叫ぶとき
子どもが泣き叫ぶのは「欲しいから」だけではなく、自分の気持ちを表現する手段がまだ未熟だから。
頭ごなしに「ダメ!」と否定すると、余計に反発して長引いてしまいます。
- まず「気持ちを受け止める」
- そのうえで「理由」と「代替案」をセットで伝える
- 落ち着いたら、「我慢できたね!」と小さくても成功体験をほめる


→ 気持ちの受容 → 理由の説明 → 代替案提示 → 成功体験をほめる



この流れを繰り返すことで、子どもは少しずつ「我慢する力」を身につけます。
看護師視点:親も感情的にならない工夫
泣き叫ばれると、親の方もイライラして「もう好きにしなさい!」となりがちです。
でもそれが一番「子どもにとって学びにならないパターン」。
- 深呼吸をしてから声をかける
- その場を一度離れて、気持ちをリセットする
- 「この場面は子どもの練習の時間」と視点を変える


「お菓子を欲しがる」という行動は、子どもにとって 気持ちを伝える・我慢を学ぶ・選択する という大切な成長のステップ。
イライラの場面を“練習のチャンス”に変えることで、食習慣だけでなく 感情のコントロール力(非認知能力) を育てていけます。
お菓子との「いい関係」を育むために


お菓子は「悪者」ではなく、親子の時間を楽しく彩るアイテムです。
- 誕生日や特別な日のケーキを囲むワクワク
- 遠足のおやつを一緒に選ぶドキドキ
- 親子で作ったクッキーの甘い香り
どれも、子どもの記憶に「安心」「うれしい」「楽しい」といった感情と結びついて残っていきます。
私たち大人も「子どものころ、遠足のおやつを選ぶのが楽しみだったな」「お母さんと作ったクッキーが美味しかったな」そんな思い出があるのではないでしょうか。
だからこそ大切なのは、 「食べすぎない工夫」と「楽しむ時間のメリハリ」。
それさえ意識できれば、お菓子はただの甘い誘惑ではなく、親子の心をつなぐ“パートナー”になります。
「ダメ!」で終わらせるのではなく、ルールを守りながら一緒に楽しむ――そんな関わりが、子どもの健やかな成長にもつながっていきます。
まとめ


- 子どもがお菓子を欲しがるのは自然なこと
- 食べ過ぎは虫歯や肥満、栄養不足のリスクになる
- ルール(時間・量・種類)を決め、親の態度を一貫させることが大切
- 子どもの気持ちを受け止めながら上手に対応する
「お菓子を欲しがる=困った行動」ではなく、「親子で食べ方を学ぶチャンス」と考えてみてください。



ほんの少し工夫するだけで、子どもとお菓子の関係はぐっと良いものになります。
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