「ほっぺたがパンパンに腫れた。おたふく?」
おたふく風邪は合併症が怖い病気です。特に難聴は一度なると治らないこともあり、保育園看護師として保護者の方にしっかり伝えたい感染症のひとつ。
この記事では、症状の見分け方・自宅でのケア・登園基準・ワクチンの大切さまでまとめました。
- おたふく風邪の症状と見分け方
- いつ病院に行くべきか
- 自宅でできるケアのポイント
- 怖い合併症(難聴・髄膜炎)について
- 登園の基準(いつから行っていいか)
- ワクチンで予防できるか
おたふく風邪ってどんな病気?症状の特徴
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、ムンプスウイルスによる感染症です。飛沫感染・接触感染で広がります。感染しても30〜35%は症状が出ない(不顕性感染)ため、知らないうちにうつしてしまうことがあります。
主な症状

- 耳の下(耳下腺)・あごの下(顎下腺)の腫れ(片側または両側)
- 腫れによる痛み・飲み込むときの痛み
- 発熱(38℃前後のことが多い)
- だるさ・食欲低下
腫れは通常1〜2週間で引いてきます。腫れる部位や腫れ方には個人差があり、片側だけの場合も両側の場合もあります。
虫歯・リンパ節の腫れとの見分け方

虫歯の痛みやリンパ節の腫れと間違えやすいですが、おたふく風邪の腫れは耳の前下あたりを中心に広がるのが特徴です。触ると柔らかくふわっとした腫れ方をします。虫歯はあごの先端側に腫れが出ることが多く、区別できます。心配なときは医療機関を受診して確認してもらいましょう。
💡 潜伏期間は2〜3週間(平均18日前後)です。感染してから症状が出るまで時間がかかるため、いつどこで感染したか特定が難しい病気でもあります。
いつ病院に行く?受診のタイミング
おたふく風邪が疑われる場合、受診前に電話で「おたふく風邪かもしれない」と伝えることをおすすめします。院内での感染拡大を防ぐための配慮をしてもらえます。
受診の目安

- 耳の下・あごの下が腫れてきた
- 発熱が続いている
- 飲み込むときに強い痛みがある
- おたふく風邪にかかったことがなく、ワクチンも未接種
⚠️ すぐ受診が必要なサイン
・頭痛がひどい・首が硬い(髄膜炎の可能性)
・ひどい嘔吐が続く
・耳が聞こえにくい・聞こえない(難聴の可能性)
・ぐったりして意識がもうろうとしている
これらのサインがある場合は、すぐに受診または救急に連絡してください。
自宅でできるケアのポイント

① 腫れた部分を冷やす
腫れて痛みがある部分を冷やしてあげると楽になります。濡らしたタオルや冷却ジェルシートを当てるのが有効です。強く押さえるのは避けましょう。
② 食事の工夫
飲み込むときの痛みで食べにくくなります。酸っぱいもの・しょっぱいもの・固いものは唾液が大量に出て痛みが増すため避けましょう。やわらかいもの(おかゆ・豆腐・プリン・ゼリー)や、冷ましたスープなどが食べやすいです。
💡 梅干し・レモン・みかんなど酸味の強いものは特に唾液が出やすく痛みが増します。回復するまでは避けてください。
③ 水分補給・安静
こまめな水分補給を心がけましょう。飲みにくい場合はストローを使うと楽なことがあります。発熱やだるさがある間はゆっくり休ませましょう。
怖い合併症について
おたふく風邪は「ただ腫れるだけ」と思われがちですが、合併症が起きることがあります。特に難聴は回復しないことがあるため、注意が必要です。
⚠️ 主な合併症
・無菌性髄膜炎(約10%)
頭痛・嘔吐・首の硬さが出た場合は要注意。ほとんどは回復しますが、早めの受診が大切です。
・難聴(約20,000例に1例)
片耳が突然聞こえなくなる一側性感音性難聴。頻度は低いものの、回復しないことが多いのが問題です。耳が聞こえにくいと感じたらすぐに受診を。
・睾丸炎・卵巣炎
思春期以降の男性の約20〜30%、女性の約7%に起こることがある。
・膵炎
腹痛が続く場合は受診してください。
治療薬について
おたふく風邪には特効薬(抗ウイルス薬)がありません。治療は症状を和らげる対症療法が中心です。
- 発熱・痛みにはアセトアミノフェン(カロナールなど)
- 腫れ・痛みは冷やす(温めると血流が増して痛みが増すことがある)
- 食事はやわらかいものに切り替える
- 安静と水分補給
合併症(髄膜炎など)が起きた場合は、入院して治療が必要になることもあります。
登園の基準|いつから保育園に行っていい?
学校保健安全法施行規則 第19条(出席停止の期間の基準)
耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫れが出てから
5日経過し、かつ全身状態が良好になるまで
腫れが出た日を「0日目」として、5日後かつ元気になってから登園OKです。
日数の数え方
- 腫れが出た日=0日目(発症日は含まない)
- 翌日から1日目・2日目…と数える
- 5日経過 + 全身状態が良好 → 登園OK
- 腫れが5日以上続く場合は、腫れが引いてからさらに状態を確認
💡 おたふく風邪は医師の登園許可証(意見書)が必要な疾患です。「腫れが引いた」と保護者が判断するだけでなく、医師に確認してもらってから登園させるよう求める保育園がほとんどです。事前に園に確認しておきましょう。
ワクチンで予防できる?
おたふく風邪はワクチンで予防できます。ただし、現在日本では任意接種(自費)です。定期接種(無料)ではないため、費用がかかります。
- 接種回数:2回接種が推奨(日本小児科学会)
- 推奨時期:1歳ごろ(1回目)・小学校入学前1年間(2回目)
- 費用:自費(医療機関によって異なる・3,000〜8,000円程度が目安)
- ワクチンを打っていても感染することがあるが、症状が軽くなる・合併症のリスクが減る
⚠️ 難聴はワクチンで防げます
おたふく風邪による難聴は一度起きると回復しないことがあります。「たかがおたふく」と思わずに、ワクチン接種を検討してください。かかりつけ医に相談してみましょう。
💡 2026年5月に新しいMMRワクチン(麻しん・風しん・おたふく風邪の混合ワクチン)が国内で承認されました。今後の定期接種化に向けた動きも進んでいます。最新情報はかかりつけ医に確認してください。
日頃の予防方法
- ワクチンを2回接種しておく(最も有効な予防策)
- こまめな手洗い・うがい
- タオル・コップの共有をしない
- 感染者との接触を避ける
- 部屋の換気
- 妊婦・免疫が低下している人への感染に注意


まとめ
- おたふく風邪は耳の下・あごの下が腫れる感染症
- 酸っぱいもの・固いものは避け、やわらかい食事に
- 特効薬はなく、対症療法が中心
- 難聴・髄膜炎などの合併症に注意。耳が聞こえにくければすぐ受診
- 登園基準は腫れが出てから5日経過し、全身状態が良好になるまで
- 医師の登園許可証が必要な場合が多い
- ワクチン(任意接種)で予防できる。難聴予防のためにも2回接種を推奨
参考文献・根拠法令
学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第19条、同施行規則第18〜19条
こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」(2018年改訂版・2023年5月一部改訂)
国立健康危機管理研究機構(JIHS)「流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)」
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さんの症状や状態については、必ずかかりつけ医にご相談ください。

