「ゆーれたね、こわかった?」
地震の後、子どもにどう声をかければいいか迷ったこと、ありませんか。怖がらせすぎるのも心配だし、かといってごまかしすぎると次に大きな地震が来たとき困る。子どもへの伝え方って、本当に難しいなといつも思います。
私は保育園で看護師として働きながら、3人の子どもを育てています。保育園では毎月避難訓練があって、0歳の赤ちゃんから年長さんまで、いろんな子どもたちの反応を見てきました。地震速報が鳴るたびにパニックになる子、泣き止まない子、逆に「またか」とケロッとしている子。同じ状況でも反応はみんな違う。
この記事では、子どもの年齢によって変わる「地震の伝え方」と、怖がる子どもへの声かけ・心のケアをまとめました。防災グッズの準備は別記事に任せて(記事の後半でご紹介します)、ここでは「どう伝えるか・どう寄り添うか」に絞ってお届けします。
- 0歳〜小学生まで、年齢別の地震の伝え方
- 「ダンゴムシのポーズ」など子どもに覚えさせたい行動
- 地震で怖がる子どもへの声かけと心のケア
- トラウマ・PTSDのサインと専門家に相談するタイミング
- 保育園看護師が見てきた、避難訓練のリアル
年齢別|「地震って何?」どう説明する?
子どもに地震を伝えるとき、大人目線の説明はまず伝わりません。年齢によって理解できる言葉も、必要な情報もまったく違うから。それぞれの発達段階に合わせた伝え方を見ていきます。
0〜2歳(赤ちゃん・1・2歳)|説明より「安心」を最優先に

この年齢の子どもに、地震の仕組みを言葉で説明しても届きません。それよりずっと大切なのが、大人の「落ち着いた態度」です。
赤ちゃんや小さな子どもは、ことばよりも表情・声のトーン・体温で安心を感じます。揺れを感じたときに親が慌てると、子どもはその不安をそのまま吸収してしまいます。「ゆれてるねー、だいじょうぶだよ」と穏やかな声でそっと抱きしめてあげることが、最初にして最大のケアです。
💬 この年齢への声かけ例
「ゆれたねー、こわかったね。もう止まったよ。ここにいるよ。」
「大丈夫、ずっとそばにいるからね。」
まい@保育園看護師ままJアラート(緊急地震速報)の音自体に驚いて泣く子も多いです。保育園でも「音にびっくりして泣いてるだけで、地震自体はわかっていない」という赤ちゃんはたくさんいます。泣いていい、抱きしめていい。まずそれだけです。
3〜5歳(幼児)|イメージしやすい言葉で、怖さを「準備できること」にかえる

3歳を過ぎると「なんで?」「どういうこと?」という疑問が出てきます。「死んじゃうの?」なんて聞いてくる子もいます。このとき、どう答えるかが大事。
難しい地学の話は不要です。イメージできる言葉で伝えましょう。
💬 幼児への説明例
「地面の下に、ぎゅーっとちからがたまって、それが出てくるときにゆれるんだよ」
「大きな岩がゴロンって動いたみたい、ってイメージ」
「また来るの?」と聞かれたら:
「来ることもあるかもしれないけど、どうすればいいか一緒に練習しておこうね」
「死んじゃうの?」と聞かれたら:
「みんなで練習してるから、ちゃんと逃げれば大丈夫だよ」
「絶対に大丈夫」「もう来ないよ」という根拠のない約束はしないこと。子どもはとても敏感で、大人が嘘をついていると感じると信頼を失ってしまいます。「備えているから大丈夫」という事実ベースの安心感を伝えましょう。
まい@保育園看護師まま怖さを消そうとするより、「怖いけど、どうすればいいかわかる」という状態にしてあげることが目標です。
小学生〜|正しい知識で「怖さ」を「備え」に変える

小学生になると、ある程度正確な情報を受け止める力がついてきます。知識があると、漠然とした恐怖が「管理できるリスク」に変わります。
📚 小学生に伝えたいこと
- 日本はプレートという大きな岩盤の境目にあるから地震が多い国
- 昔からの人たちも「備えてきた」という歴史がある
- ハザードマップを一緒に見て、避難場所を確認する
- 学校にいるときに地震が来たら、どこで家族と合流するか話し合う
- 「171(災害用伝言ダイヤル)」の使い方を一度試してみる
「知ること」が「怖さ」を「備え」に変える最初のステップです。怖い話をするのではなく、「自分でできることがある」という自信を育てるイメージで関わってあげてください。
地震が来たとき、子どもがとるべき行動
知識と同じくらい大事なのが、体で覚える「行動」です。「考える前に動ける」レベルまで練習しておくのが理想。難しく考えなくて大丈夫、まずこれだけ覚えてれば十分です。
🐛「ダンゴムシのポーズ」で頭を守る

保育園でも毎月練習している「ダンゴムシのポーズ」。地震が来たときにすぐとれるよう、おうちでも遊び感覚でやってみてください。
- その場にしゃがむ
- 両手で頭(首の後ろ)をしっかり覆う
- お腹を丸めて小さくなる
- テーブルや机があれば下に入る(脚をしっかり握る)
保育園で年中〜年長になると、地震速報の音が鳴った瞬間に自分でポーズをとれる子が増えます。繰り返しの訓練ってすごいなと思う場面のひとつです。
🚪 揺れが収まったら「出口確保」と「火の確認」

- ドアを少し開けて、逃げ道を確保する(変形してドアが開かなくなることがある)
- 台所の火を消す
- 靴下か靴を履く(室内でもガラスが散乱していることがある)
- 揺れが完全に収まってから移動する(二次揺れに注意)
「揺れが止まったらすぐ外に出る」は間違いです。余震が来ることが多いので、揺れが完全に落ち着くまで待つこと、外に出るときは周囲の状況(塀・電線・看板など)に気をつけることを子どもにも伝えておきましょう。
子どもが怖がったとき|看護師目線の声かけと心のケア
地震の後、何日も夜に泣く子・揺れるたびにパニックになる子。保育園でも「先生、またゆれた?怖い」と抱きついてくる子はいます。怖がること自体は正常な反応なので、否定しないことが大原則です。
まず「抱きしめる」、それから「ことば」

子どもが泣いているとき、ついつい「大丈夫!」「もう止まったから!」と言葉で安心させようとしてしまいます。でも怖さのピークのときは、ことばより体温のほうが先に届きます。
- まず抱きしめる(言葉より先に体温で安心感を)
- 「怖かったね。びっくりしたね」(気持ちを否定せず、そのまま受け止める)
- 「もうゆれは落ち着いてきてるよ。ここにいるよ」(今の安全を穏やかに)
- 落ち着いた声・穏やかな態度を保ち続ける(大人の落ち着きが一番の安心材料)
「泣かないの!」「もう大丈夫でしょ!」と泣くことを止めようとすると、子どもは自分の感情を否定されたと感じます。泣くことは感情の放出。「泣いていいんだよ」と受け止める姿勢が、子どもの心の安全基地になります。
そしてもうひとつ大事なこと。大人自身の不安を子どもの前で出しすぎないこと。「また来たらどうしよう」「もう怖くて…」という言葉は、子どもにとっての”安全基地”が揺らぐ体験になってしまいます。親が落ち着いていることが、子どもにとって最大の安心です。
これは「普通の怖がり」じゃないかも?PTSDのサインを見逃さない

地震直後から数週間は、多くの子どもに何らかの心理的な反応が出ることは珍しくありません。でも、それが長引いたとき、注意が必要です。
- 地震の場面がフラッシュバックする・繰り返し悪夢を見る
- 些細な物音にビクッとする・常に緊張している
- 地震の話題を極端に避ける・特定の場所に行くのを怖がる
- 以前より無気力・無表情になった・笑わなくなった
- 頭痛・腹痛・食欲不振が続く・おねしょが再発した
- 「学校行きたくない」「お腹が痛い」という身体症状が続く
「感情の麻痺」と呼ばれる状態も注意が必要です。地震後に急に無口になる・以前楽しんでいた遊びに興味を示さなくなる。これを「冷たくなった」と誤解することがありますが、耐えきれない恐怖から自分の心を守るための、自然な防衛反応です。責めたり、無理に感情を出させようとするのは逆効果になります。
「時間が経てば自然に治るだろう」と様子を見ているうちに、トラウマやPTSDへと移行するケースも実際にあります。上記のサインが1ヶ月以上続く、日常生活(食事・睡眠・登園)に支障が出ているなら、かかりつけ医・児童精神科・臨床心理士に相談を。早めの介入が回復を大きく左右します。
保育園の避難訓練って、実際どんな感じ?

保育園で働いていると、毎月の避難訓練がいかに大切かを実感します。いっぽうで「訓練だから」と子どもたちが慣れすぎてしまうことへの葛藤もあります。
0〜1歳の赤ちゃんクラスは、放送が鳴っても状況を理解できません。担任が抱っこやおんぶで抱えながら、落ち着いた声で「だいじょうぶだよー」と話しかけながら避難します。あの「穏やかに話しかけながら迅速に動く」技術は、保育士さんたちすごいな…といつも思います。
3〜5歳になると、訓練の内容がだいぶわかってきます。「地震ごっこ?」なんて言いながら笑ってダンゴムシのポーズをする子もいれば、真剣に「ここでいい?」と聞いてくる子もいて、個性が出ておもしろいです。でも本当に緊急地震速報が鳴ったとき、ちゃんとポーズをとれた子を見ると、訓練ってやっぱり大事だなと思います。
おうちでも、「地震ごっこしよう!」と遊び感覚でやってみてください。「どこが一番安全?」「テーブルの下に入ってみよう」と一緒に動いてみる。深刻にやる必要はなく、楽しい雰囲気でOK。繰り返し遊ぶことで、体が自然に動くようになります。
🏠 おうちで訓練するポイント

- 「地震ごっこしよう!」と遊び感覚で誘う
- 各部屋で「一番安全な場所」を一緒に確認する
- 家族と離れていた場合の「合流場所」を決めておく
- 月に1回でも「もし地震が来たら?」と話し合う時間をつくる
- 訓練後に「今日のはなちゃん(保育園)どうだった?」と聞いて、家での練習につなげる
「子どもに地震を伝えること」と同じくらい大事なのが、いざというときのための備え。持ち出し袋の中身・備蓄食料・乳幼児グッズのリストは別記事でまとめています。

まとめ|「何かあっても一緒に考えてくれる大人がいる」が一番の安心
子どもが地震を怖がることは、自分の命を守ろうとする自然な本能反応です。否定せず、「怖かったね」とまるごと受け止めることが心のケアのスタートラインです。
📝 この記事のまとめ
- 0〜2歳は「安心感」が最優先。落ち着いた声・抱っこが一番
- 幼児には「地面がゴロンした」などイメージしやすい言葉で
- 「絶対大丈夫」はNG。「備えているから大丈夫」が正解
- 小学生には正確な知識と合流計画。「知ること」が「備え」になる
- ダンゴムシのポーズを遊び感覚で繰り返し練習
- 泣くことを止めず、まず抱きしめて「怖かったね」と受け止める
- 1ヶ月以上サインが続くならかかりつけ医・専門家に相談を
完璧な備えでなくてもいい。「何かあったら一緒に考えよう」という気持ちで子どものそばにいることが、子どもの心を一番強くしてくれます。
この記事が、地震への不安を抱えているお子さんと保護者さんの、小さな一助になれたら嬉しいです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さんの状態・症状については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。

